片隅で逢いましょう

読書、絵画、夢想などのあれこれを嗜み、気ままに書き綴る方舟を漕ぐ旅人の手慰み日記。広大無辺の虚数の海の片隅へようこそ。

読書

『インフラグラム』港千尋(講談社選書メチエ)〜「影像」を暴け〜

それにしても「依存」というのは恐ろしい。これは本人が意識しないうちに体内に忍び込んでは牙を剥くウイルスのようだ。自らの生活の最中から、自らの核たる体内に紛れ込み、僕を病苦に陥れてしまう。細胞を持たず、食事も排泄も睡眠もしないくせに、増殖だ…

『女神』三島由紀夫 (新潮文庫) 〜その美は誰がために〜

「私は完全な女を作ったのだから、あの子が不幸になることは、女全体が不幸になることなんだ」 1. 周伍のピュグマリオニズム 「男は目で恋をする」とは良く言ったもので、男の方が一目惚れが圧倒的に多く、しかも一目惚れしてからの恋愛や結婚は満足の度合い…

ピュグマリオンの系譜 ~あるいは、幻視者たちの郷愁~

1. ピュグマリオンとピュグマリオニズム この世で最初に「美」に耽溺した者は誰か。それは僕には到底知りえないが、最初に理想の美を体現せしめようとした人間ならば知っている。 ギリシア神話に登場するキプロス島の王、ピュグマリオンである。 彼は現実の…

方舟 〜虚数の海の片隅で~

どこにいるやも知れぬ、愛すべき旅人たちすべてに捧ぐ。 PortHill ================= 「わたくしの考察の出発点は以下のとおりである。家のすべての片隅、部屋のすべての角、我々が身をひそめ、からだをちぢめていたいとねがう一切の奥まっ…